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最近のリーンスタートアップ事情

最近のリーンスタートアップ事情

リーンスタートアップとは

昨年来、リーンスタートアップという言葉が日本のベンチャー界隈を賑わしている。リーンというのは「薄い」という意味であるが、要はお金をあまりかけず、1~3ヵ月程度でさっさとアプリ・サービスを立ち上げてしまうやり方だ。

月間アクティブユーザー8億5000万人を超えたFacebookも、2004年にザッカーバーグが18歳の時、一人で数週間で開発した。米国では、4~5年前から急激に主流になっており、その後世界中に広がっている。

リーンスタートアップのアプローチによって、米国では特にIT・ソーシャルメディア系では創業後それほど資金を必要としないベンチャーが増え、従来形のベンチャーキャピタルがビジネスモデルの転換を迫られている。

リーンスタートアップでは、費用も、100~200万円程度でアプリ・サービスを立ち上げてしまう。学生を中心にしたベンチャーの場合は、数十万円以内の場合も多く見られる。日本でも、多くの社会人が、夜あるいは週末にせっせとアプリ・サービスの開発を進めるケースがかなり増えている。

私は2000年からベンチャー共同創業、経営支援に取り組んできたので、昨年来の変化を嬉しく、かつ痛切に感じている。創業への相談が増えただけではなく、取り組みのスタイルが大きく変わった。

以前であれば、一念発起して創業準備し、親・親戚等に借金もして会社を設立した。それから製品・サービスの開発に取りかかることが普通だった。リーンスタートアップでは大きく変わった。以前のようなベンチャー起業ももちろんあるが、ソーシャルメディア・スマートフォン分野では、まずアプリ・サービスを開発し、立ち上がってから会社を設立するケースが続出している。

リーンスタートアップが可能となった背景

リーンスタートアップが可能となったのは、何と言っても、Facebookの影響が大きい。Facebook API(本人が許可すれば、Facebookの友達情報や行動履歴等を無料提供)を使うことで、8億人のソーシャルグラフをフルに活用したFacebookアプリ数週間で作ることができるようになった。学生エンジニアも全く問題なく開発している。さらに、Twitter API、Foursquare API等あり、アプリ・サービスの企画の幅を広げている。Facebook APIは2007年5月に公開されたが、これは大英断であった。

AppStore、Androidマーケットの発展も、無数のディレクター、マーケッターやエンジニアの心に火をつけた。2011年には世界で4億7200万台のスマートフォンが出荷されており、近い将来、10億台を超えることは確実だ。優れたアプリはそこで目立ち、ユーザーの声が集まり、ランキングも上位となり、収入増に直結する。第2に、安価で非常に使いやすいクラウドの存在がある。サーバー知識や運営体制に不安があっても、アプリ開発者はインフラ技術者の力をそれほど借りることなくアプリ・サービスの開発をし、極めて安価に運営できることになった。Amazon EC2の日本上陸がそれに輪をかけている。また、安価な割に高い自由度があり、高品質のサーバーホスティングサービスが多数提供されている。

第3に、開発環境がどんどん改善され、従来に比べて開発がはるかにやりやすくなった。フレームワーク・ライブラリー等の整備により、それほど経験のないエンジニアでも、それほど苦労せずにアプリ・サービスの開発をすることが可能になった。「Unityを使い3次元メダル落としゲームを20分で開発」というニコニコ動画があるが、本物そっくりのメダルが上からぼとぼと落ちてきて積み上がったり、崩れたり、下に落ちたりするゲームがわずか20分でほぼ完成するのを見るのは、大変な驚きだ。ネット上で有名にはなったが、もしまだの方は、ぜひとも一度ご覧いただきたい。目を疑うはずだ。

第4に、Facebook、Twitter等のソーシャルメディアの普及で、よいアプリ・サービスは一瞬で広まる時代になった。ユーザーが使用すると、その情報がFacebookウォール、Twitter等にほぼ自動的(選べるとはいえ)に流れて友達・フォロワーが見ることになるのは、お約束だ。ソーシャルメディアの普及により、よい記事はよく読まれ、Twitterでリツイートされることが非常に増えて、ブログを書く意欲が大変高まっている。したがって、感動するアプリ・サービスに関する記事は、短時間のうちに多数書かれる状況だ。

第5に、少額投資するインキュベータやVCが10社前後に増えたため、急成長しそうなサービスに対しては、資金調達がかなり容易になっている。

リーンスタートアップへの懸念と意味合い

一方、リーンスタートアップの問題点を指摘する声も上がっている。学生や20代ののりで、現実味やビジネス面の配慮が少なく、起業ごっこをしているようなものだ、というわけだ。そう言いたい気持ちもわからないではないが、デジタルネイティブが自分の感性で必要だと思うアプリ・サービスを企画・開発して世に問うことで、米国でも中国でも他の国でも、大ヒットが生まれている。もちろん、日本でも生まれている。

もはや「大人」も「子ども」もない。「子ども」の方がソーシャルメディア、スマートフォン時代にはよほど戦闘力、行動力がある。20代で起業するなんて、というやっかみもあるかも知れない。

リーンスタートアップの特長は、何といっても費用をかけず、さっさとアプリ・サービスを作ってしまうことだ。いったんリリースすれば、ユーザーからのフィードバックがあり、どんどん改善されていく。そのプロセスで、若い経営者はどんどん成長する。そもそも、ほとんどリスクがない。いくらでもやり直しがきく。失敗経験も本人の成長には大変に役立つ。リーンスタートアップへの懸念自体は、杞憂だと考えている。

ただ、インキュベータが多数立ち上がり、それほど検討せずに出資をしたり、企画・経営面での支援をあまり提供しないとすると、問題がある。当然ながら、経験の少ない経営者には、徹底的な支援・助言体制が必要となる。

同時に、リーンスタートアップにとってソーシャルメディアは重要なインフラである。まだ進化中なので、日々の研究により使い方を工夫し続けることが競争優位性上、必要となる。

今すぐ積極的に動かないと

事業環境が大きく変化し、多くの一流企業が前代未聞の脅威にさらされている。

パナソニック、シャープ、ソニー、NEC等、電気系の大手製造業が付加価値の源泉が「モノ作り」からサービス・ソフトウェアに移ったことに全く対応できておらず、巨額の赤字に苦しんでいることは前回述べた。

モノ作りの強みをベースに、ベンチャーをどんどん活用してサービス・ソフトウェア事業をうまく立ち上げていれば、米Appleや韓国サムスンにここまで大きな差をつけられることはなかったはずだ。

iモード以来、国内のコンテンツプロバイダーは、大変によい思いをしてきた。海外からの参入がほとんどなく、高い利益率を維持できていたからだ。そういう状況では、経営努力ができなくなる。経営努力をしないと企業の屋台骨が根幹から腐って競争力が落ちるのは世の常だ。

スマートフォン時代には、モバイル大国であり課金に慣れた日本のモバイルユーザーをねらって、海外からスマートフォンベンチャーが続々と乱入する。日本からも当然攻めていけるが、これまで揉まれてなかった分、足腰が相当に弱い。

日本の大企業が様子見をしているうちに、国内外で無数に湧いてくるベンチャーが1~2年で数百倍、数千倍に成長する。到底追いつけないほどの早さで駆け抜けていく。アプローチを根本的に変えないと、その成功を指をくわえて見ていることになる。

グーグルやFacebookが誕生した時、誰がその後の爆発的成長と10兆円を超える時価総額を想像したであろうか。無名の二人のスタンフォード大学卒業生が写真加工・共有アプリInstagramを2010年10月に出した時、誰が1年半弱で2700万ダウンロードされ、売上ゼロにも関わらず時価総額400億円になると想像したであろうか。

幸い、日本でもリーンスタートアップで非常に多くのベンチャーが生まれている。生まれたからには、グローバルで成功していただきたいし、そういうビジョンで果敢に飛び出していく若手経営者が増えた。

後は、内外の有望ベンチャーに積極的に出資し協業することで巨艦の方向転換を図る、大企業経営者の出現だ。現状の延長線上に答えはない。英断を期待したい。

昨今のリーンスタートアップ事情を受け、今年2月より年4回、新進ベンチャー、起業準備中のチームに(学生、社会人等)対し出資し、オフィスを無料で提供し、アプリ・インフラサポートデスクを提供し、きめ細かい企画支援、経営支援、資金調達支援により一緒に世界をねらうブレークスルーキャンプ by IMJの取り組みを開始した。すでに大きな手応えを感じており、大企業との協業も始まりつつある。(プログラムへの参加、および協賛等ご関心をお持ちの新進ベンチャー、創業準備中のチーム、企業の方はsupport-btcamp@imjp.co.jpまで。)

 
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