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【リーン・スタートアップ、2013年の展望】次のターゲットは女性と大企業変革

【リーン・スタートアップ、2013年の展望】次のターゲットは女性と大企業変革

―スタートアップを支援する立場からみて、2012年はどんな年だったでしょうか?
2012年は、「リーン・スタートアップ」がキーワードとして頻繁に使われました。私自身もよく使いましたが、エリック・リース氏による同名の著書を読み直し、その要点を改めて考えてみると「超高速仮説構築検証型商品開発」と言い換えたほうがいいと考えるようになりました。ベタではありますが、こちらの方が実体を正確に表現できていると思います。

つまり、「価値仮説と成長仮説、KPI(Key Performance Indicator、主要業績評価指標)を設定し、必要最小限の機能を実装した製品(MVP:Minimum Viable Product)を作り検証するというプロセスを短期間で高速に回すこと」がリース氏の伝えたいことであり、無駄がないことを意味する「リーン」や、生まれたばかりの企業をイメージする「スタートアップ」を使うことで、適用範囲を狭めてしまうと考えたのです。

超高速仮説構築検証型商品開発であれば、スタートアップ企業だけでなく、既存の大企業の関係者も関心を持ち、その商品開発プロセスにも適用しやすくなるでしょう。呼び名はいずれだとしても、このアプローチは、商品開発には極めて有効な手段です。もっと多くの人に取り組んでもらいたいと思っています。


―赤羽さんの取り組みも大きく広がったように思います。

写真1●ブレークスルーキャンプ by IMJのキックオフイベント

 

個人的には、IMJインベストメントパートナーズと一緒に起業支援プログラムブレークスルーキャンプ by IMJ」を立ち上げたことが大きな成果でした(写真1)。これは、1社に500万円を出資、ネットサービスの構築にノウハウを持つIMJが支援するベンチャー・インキュベーション(孵化)の活動です。

写真2●ブレークスルーキャンプ2012 Summerの決勝イベント

 

 

さらに、2011年に続いて学生向けの「ブレークスルーキャンプ2012 Summer」を今年7月に急きょ開催することになりました。昨年は2カ月のプログラムでしたが、今年はわずか5週間のプログラムでしたので、うまくできるかどうか不安でしたが、やはり大きな成功を収めることができました(写真2)。

こうした取り組みに加えて、現在力を入れている取り組み分野には「女性の起業支援」「東南アジアでの事業展開」「大企業の経営変革」があります。

最初の女性の起業支援については、第一歩として先日「女性のためのスマホ・iPadアプリ企画ワークショップ」と題したワークショップを開催しました。企業の手前のアプリ企画の段階を後押しするものです。当初、集客に苦労しましたが、最終的に45人に参加していただき大きな手ごたえがありました。

驚いたのは、応募者の出席率です。イベント支援サービスの「PeaTiX」を使いましたが、応募された方のうち、実際に参加された方は90%に達しました。PeaTiXのイベントの平均参加率は75%とのことですので、非常に高い数字です。好評だったことから、12月18日には第2回目のイベントを開催することにしています。第2回では、企画案をどうやってユーザーインタフェースに落とし込むのか、ワークショップ形式で進めていきます。11月、12月のワークショップの前には、8月にスタートアップで働く女性を講師として呼んだイベントも共同開催しました。

―なぜ今、女性支援なのでしょうか?
なぜ女性に注目しているかというと、女性が大きく活躍できると信じているからです。女性のポテンシャルは非常に大きいです。実際に財布のひもを握っているのは、多くの場合、女性です。男性の起業家が女性の気持ちを十二分に理解してサービスを作れるかというと疑問です。女性の感性を生かした新しいサービスを作り、起業していただくのは何より重要だと考えています。カベに当たっている日本で、彼女たちのパワーを生かさない手はありません。  IMJインベストメントパートナーズ代表取締役社長の堀口雄二氏はリクルート時代に習い事の情報メディア「ケイコとマナブ」の編集長経験もあり、私と同じように女性のパワーを引き出したいという強い信念をお持ちです。

2013年の2~3月には、女性が活躍できる機会として、女性向けアプリ企画コンテスト「ブレークスルーキャンプ for Woman」を開催する予定です。その準備として、現在のところ2013年1月28日に、プレキックオフイベントであるWomen’s Nightを計画しており、250人ほどの方に集まっていただき気勢を上げたいと思います。ビジネスで大活躍している素晴らしい3人の女性に基調講演をお願いしています。  ブレークスルーキャンプ for Womanの決勝プレゼン大会には、エンジニアを50人以上お呼びして、上位入賞した企画案へのマッチングを行う予定です。具体的には、上位入賞者のプレゼンに対して、男性エンジニアが気に入った企画にその場で旗を上げ、翌週マッチングパーティを開催します。中には女性エンジニアもいらっしゃるかもしれませんが、特に限定しません。必要スキルや相性が合い、うまく意気投合してマッチングできれば、早速開発を始めていただき、5週間後に開発コンテストを開催する予定です。  女性向けでここまで徹底してサポートし、かつ実際にアプリを作るお膳立てまでして、開発競争をし、場合によって起業まで支援するプログラムは世界初ではないかと自負しています。ぜひ期待ください。  そのステップとして、先ほど申し上げた「女性のためのスマートフォン・iPadアプリ企画ワークショップ第2回」にはなるべく多くの女性にご参加いただければと思います。

―アジアにも力を入れているとのことでした。
二つめの取り組みである東南アジアでの事業展開については、主にインドネシア、シンガポールを中心とした東南アジアのベンチャーへの投資・経営支援、および中堅企業の買収などを通じたIMJとしての最速での事業立ち上げです。シリコンバレーや東欧などを拠点としたベンチャー・キャピタルであるフェノックス・ベンチャー・キャピタルと一体となって投資活動を進めていきます。

活動としては、現地の有望なインキュベータ、VCの協力を全面的にお願いし、「ウィン・ウィン・ウィン・ウィン」の関係を作っていきます。日本およびシリコンバレーからのノウハウと、現地での誠心誠意、電光石火、かつ、かゆいところに手の届く支援を通じて大きく成功していただこうというものです。

上記を実現するため、今年は、IMJインベストメントパートナーズの堀口社長、岡洋氏、瀬尾康浩氏と一緒に7月、10月、12月にシンガポールやインドネシアに足を運びました。

2013年2月からは、堀口社長がシンガポールに、瀬尾氏がインドネシアに駐在します。私は2週間に一度現地を訪問して、投資先ベンチャーを支援し、新たな起業家と会い、講演会・ワークショップを開催し、事業展開を加速していきます。

3番目の取り組みとしては、大企業の変革があります。2012年はシャープが苦境に陥り、パナソニックやソニーなど大手電機メーカーが軒並み膨大な赤字を計上しました。何年も前から警告されてきたことですが、迫り来る危険に対して、大企業の経営者は痛みを伴う大きな方向転換とその舵取りをすることができませんでした。

ほとんどの日本人はのほほんとしていますが、日本史上最大級の危機だと考えています。元寇の来襲、ベリーの黒船来航、第二次大戦勃発・敗戦、オイルショックなど、危機そのものはその時々でもっと深刻なものがあったとは思いますが、今との違いは、危機感を持って対応しているかどうかです。残念ながら、私の知る限り、またインサイダーから伝わってくる限り、大企業の経営者の危機感(行動に表れた危機感)は非常に低いです。ということは、まだ底ではなく、膿が出尽くしておらず、舵を切れていないので、もっともっと悪くなります。

この部分は、私がマッキンゼーに在籍以来、LGグループに対して10年、日本の大手消費財メーカーに対して4年、徹底的に支援し、経営改革を加速してきた部分ですので、どこをどうすればどう動くのか熟知しています。この2つの企業の経営者は、本当に立派な方々でした。大企業の経営改革は、トップがその気になりさえすれば今すぐにでも始められます。ただ、最低でも3年、普通は5~7年かかることですので、一刻も早く腹をくくっていただけないかなと思っています。

また、大企業によっては大規模なリストラを始めていますが、身を削るだけではダイナミックな事業環境下での大きな成長は望めません。自前主義をさっさと捨てて、有望ベンチャー企業に積極的に投資したり、買収後に最速で統合メリットを出すための方法論を提案したいと思います。鍵は、問題把握・解決力を持った少人数の経営改革・経営統合支援チームの設置と人材育成です。打てば響く、電光石火の経営意思決定は言うまでもありません。

日本ではそれは難しいと寝言を言っておられる方もいらっしゃるようですが、そんなことはありません。明確な方法論を確立しています。これらができれば、半分沈みかかった大企業でも、考え得る限り最速で経営改革を進め、新しい成長事業を手に入れることができます。

この場合、経営層の意識改革が極めて重要で、「おみこし経営」などは論外です。社長の問題意識、感度が鈍い場合、社長を支える副社長・執行役員や中間管理職には、社長を動かす努力をしてもらいたいです。経営改革を推進しようとする幹部を飛ばそう、外そうとする社長がいる大企業は退場していただくのが一番社会に貢献します。なぜなら、拘束・束縛されていた、もと優秀だった多くの社員が甘えを捨てて、自力で泳ぎ始めるからです。

山一証券が経営破たんした後、多くの優れた金融ベンチャーが生まれました。韓国では、サムスンなどの財閥から数千人規模のエンジニアが辞めた後、韓国企業・ベンチャーは非常に元気になりました。そこまで行かない場合は、下手をすると“大企業ゾンビ”が生まれます。ますます悪化します。そうなる前に社長、あるいは経営幹部、あるいは社員が立ち上がり、本質的な課題解決に取り組めるかどうかです。

2013年には、これまで説明した取り組みを通じて女性の起業家を何名かご支援し、インドネシア・シンガポールでも数社以上の有望な企業に出資したり、買収したりすることを目指しています。大企業については、経営改革のお手本となる会社の取り組みをお手伝いできればと考えています。

―今後、注目される分野はありますか。
今後有望な分野としては、現在力を入れているスマートフォン向けアプリに加えて、リアルとネットビジネスをつなぐ「O2O」(オンライン・ツー・オフライン)、ソーシャルテレビ、興味を基に人間関係を築く「インタレストグラフ」などがあります。スマートフォンやタブレット、テレビといった端末を使うユーザーが、インタレストグラフでつながり、そのインタレストグラフを生かしたサービスは、超高速仮説構築検証型商品開発を使って生み出されるという関係です。

現在、日本には起業時に出資してくれるインキュベータが多数あります。特にブレークスルーキャンプ by IMJ は日本最大のウェブ開発会社であるIMJのリソースもフル活用し、起業家の立場でご支援しています。超高速仮説構築検証型 商品開発によって、多くの人に事業を成功させていただけたらと思います。
 
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