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社内の抵抗を押し切って新事業開発を進めるには

社内の抵抗を押し切って新事業開発を進めるには

新事業開発には社内のほぼ全員が反対する

多くの日本企業の業績にはかげりが見られます。会社の成長をここまで支えてきた既存事業の売上が頭打ちになり、利益率が急激に悪化している企業が多いからです。

その結果が、上場企業であれば、数十兆円以上の時価総額となった米国企業との極めて大きな差であり、中小企業であれば、事業継続の危機、ということではないでしょうか。

そういう状況であっても、新事業開発には社内のほぼ全員が反対しがちです。勝手が違うということだけで反発したり、批判的な目で見たりします。異物へのアレルギー反応のようなものですね。

売上が立ったら立ったなりに、「そんな売上だと何も貢献しない。やっても無駄だ」と言うでしょうし、多くの場合は赤字なので「誰のおかげで給料が出てると思ってるんだ」などと言うでしょう。

そういった心ない言葉を吐かなくても、嫌みな目で見たり、「あーあ」と言ったり「ふん」と言ったりするだけで、新事業開発チームのメンバーは心が折れます。自主的に手を挙げて参加したのであれば、上司に「早く戻ってこいよ。もうあきらめろよ。やっても無駄だよ」と言われますし、アサインされたのであれば元の部署が取り戻そうとします。こういう例を多数見てきました。

社長は新事業開発の重要性を強調するが、口だけ

社長はもちろん新事業開発が大切なことを一応強調します。年初の挨拶とか、方針説明会などでです。ところが、残念ながら、ほとんどの場合は口だけです。

なぜ「口だけだ」と言えるかは、「口だけでない」とはどういうものかをご覧いただければ、すぐにわかると思います。

  1. 新事業開発プロジェクトを社長直下に置く: 新事業開発プロジェクトを社長直下に置くことで、社長の本気度を明確に伝えます。事業部などからの雑音に負けずに推進できるようになります。事業本部長や事業部長の下に置くと、社長の指示の手前、フォローするような動きをしますが、実際はよくてややポジティブ、多分中立、下手をすると微妙にネガティブなメッセージを出し続けます。「社長はああ言うけど、うまくいくことなんかないよ。あんまり無駄な努力をするなよ」というような感じです。
  2. 場合によっては、社長室の近くに置く: さらに本気度が伝わります。物理的な距離はそれ自体が重要なメッセージです。社長の近くにいて、ときどき声をかけられることは、新事業開発プロジェクトにとって命の水となります。
  3. 責任は取るから思い切ってやれと言い、実際にそのように振る舞う: 新事業開発チームメンバーは勇気倍増になります。新事業開発は、成功し実績を上げている既存事業よりも何倍もむずかしいものです。いかに果敢にチャレンジしようと、全身全霊で取り組もうと、結果の責任を取れるものではありません。むしろ他の全員の代わりに矢面に立っているわけですから、成功しようがしまいが特別手当を出してしかるべきものです。そういう状況では、社長の一声がメンバーを奮い立たせます。
  4. 社内のエースを新事業に投入する: 社内のエースを温存して新事業開発をしようとしてもうまく行きません。既存事業よりよほどむずかしいからです。分野が少しくらい違っても、行動力のあるほうが成功します。多くの場合、その時点で忙しくないメンバー、あまり結果を出せていないメンバーが選ばれがちですが、それでは最初から失敗が約束されているようなものです。各部のお荷物社員が新事業開発プロジェクトに送りこまれないように釘を刺すのは、社長の役割です。
  5. 新事業開発プロジェクトメンバーはフルタイムで参加する: 新事業開発プロジェクトメンバーが直前まで担当していた仕事を100%誰かに引き継ぎしてから参加できることは、あまり多くありません。その結果、新アサインメントに集中できないだけではなく、ストレスばかりで、本人の成長にもつながりません。ただでさえ大変な新事業開発プロジェクトはフルタイムでの参加が不可欠です。元の部署のほうでは、その人が退職した、もういなくなった、というくらいに思うしかありません。
  6. 外から必要な人材を採用する: 新事業であればあるほど、社内人材だけで推進することはむずかしくなります。「頑張って何とか進めてくれ」といった精神論で勝負できるはずがありません。ハードウェアメーカーがソフトウェア、サービス事業に乗り出す場合など、なおさらそうです。さらに、AI、ビッグデータ、ブロックチェーンなどが必須になってくると、社内育成だけでは到底追いつかなくなります。

社長が指示だけしても、下は動かない

新事業開発は大切だと考えられているので、社長が指示することも多いでしょう。ところが、社長が言うだけでは、下はあまり動きません。社長は部下に指示をしたり、人事異動をしたりする権限を持っていますが、その通りに動かす強制力を持っているわけではないからです。それに指示の内容が「○○の分野で新事業を立ち上げてくれ」といった曖昧なものなので、組織を動かすことができません。

もちろん、社長の指示をあまりに無視をする部下がいた場合、手続きを踏んで降格したり、はずしていったりすることはできます。ただ、それを乱用すると、部下からの信用を落としますので、簡単にはできません。そんなことより、部下がその気になるビジョン、社長のためならと思わせるリーダーシップ、人間力、その上で指示だけではなく実行上の具体的な方針設定と進捗管理により、新事業開発を推進していく必要があります。

新事業開発に関して言えば、誰も表だって反対意見は言わないものの、積極的に後押ししてくれるわけではないので、社長が推進していくしかないのです。

新事業を生み出せる体質に全社を変えていく

社長の直接的なリーダーシップに加え、もう一つ大切なことがあります。それは「新事業を生み出し続ける体質」です。

「新事業を生み出し続ける体質」とは、社長、新事業推進担当役員、新事業開発プロジェクトリーダー、新事業開発プロジェクトメンバー、彼らの出身母体の上司などが成功体験を持ち、新事業に対して非常に前向きに行動しているような体質です。

これができてくると、社長がそこまで時間を使わなくても、新事業が生み出されていきます。好循環が生み出され、日本企業には珍しい、競争力を持つようになります。

新事業を生み出し続ける体質に変えていくには、次のようなステップが考えられます。

  1. 社長は、社内の最も優秀な部下をリーダーとした新事業開発プロジェクトを3つ発足させ、自らも十分に関わって2,3年のうちに1つ以上を成功させます。競争することが鍵になります。成功確率を上げるため、ホームランをねらうのではなく、比較的難易度の低いテーマを意図的に選ぶ必要があります。社内の反対、サボタージュを押し切るため、この段階では社長の手厚いサポートが不可欠となります。「社長のペットプロジェクトだ」と陰口をたたく人が必ず出てきますが、気にする必要はありません。
  2. 新事業開発は、思いつきでできることではありません。また、やる気があれば、熱心にやればできる、というものでもありません。即断即決、即実行、仕事の段取り、動きかた、コミュニケーションのしかたなど、すべてに渡って、支援の専門家が必要です。といっても社内にはいませんので、新事業立ち上げ推進チームを設置し、特別なトレーニングをへて、社内に支援スキルを構築する必要があります。このチームが、新事業開発プロジェクトの各チームを全面的に支援します。
  3. 着手1年程度で、少なくとも1つの新事業が立ち上がり始めたら、活動のポイント、ベストプラクティスなどを社内で共有し、第2ラウンドとして次に取り組むべき3つのテーマを決め、それぞれプロジェクトを始めます。このへんまで来ると、社長の強い意志が伝わり、しかも新事業を生み出し続ける具体的なイメージが社内に生まれますので、新事業立ち上げ推進チームに優秀な人材を入れてフォローしさえすればうまく回っていきます。

 
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