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経営改革を進める第4の鍵: 高度な経営支援能力の構築-経営改革推進チームの設置と実践トレーニング

経営改革を進める第4の鍵: 高度な経営支援能力の構築-経営改革推進チームの設置と実践トレーニング

→ Read English translation: The Fourth Key: Management Innovation Team

経営改革を進めるには7つの鍵を同時に開けること」という提案をさせていただいた。今回は「経営改革を進める第4の鍵:高度な経営支援能力の構築-経営改革推進チームの設置と実践トレーニング」について、くわしくご説明したい。

経営改革推進チームの役割と立ち位置

経営改革推進チームの役割は、既存事業の立て直しや複数のリーンスタートアッププロジェクト推進時に生じる多くの問題点を解決し、プロジェクトの直接的な責任者を支援して順調に進行させることにある。

どちらも、会社組織の慣性や社員の反対を乗り越えなければならない上、「本来会社はどうあるべきか」というゼロベース発想が要求されるので、ラインの人間だけでは大胆に進めることがむずかしい。

既存事業であれば、自分たちが必死になって守ってきた事業のあり方を多かれ少なかれ壊さなければならず、当事者にはかなりむずかしい。わかっていてもしがみついてしまうからだ。また、多くの場合、ほかの事業の経験がそれほどあるわけではないので、人として頑固ではなくても、柔軟な頭ではなくなっている。

複数のリーンスタートアッププロジェクトを進める際も、従来の新規事業の立ち上げ方やスピード感とは大きく異なるので、ある程度新しいやり方に慣れた経営改革推進チームメンバーがコーチングしなければ、本来のリーンスタートアップを徹底することができない。価値仮説が甘いまま走ったり、MVP(実証ミニプロダクト)を何ヵ月も作り込んだり、ピボットを躊躇したりする。

経営改革推進チームの立ち位置は、既存事業部やリーンスタートアッププロジェクトに対して上から命令するのではなく、横から支援・助言する形を取る。そのほうが当事者のコミットメントを引き出しやすく、責任の所在がはっきりする。

ただ、組織としては社長直下に置き、社長直属のスタッフとして行動する。もちろん、社長の威光を傘に着て上から目線で接することは決してあってはいけない。あくまでプロジェクト責任者と対等な立場から支援する。

経営改革推進チームメンバーの選抜とスキルアップトレーニング

経営改革推進チームは難易度の高い重要な役割なので、普通に仕事ができるだけのメンバーだけでは機能しない。問題把握・解決力が強く、チャレンジ精神と向上心が強く、社内でも尊敬されている部課長4~6名を選抜する。

当然、各部署のエース級に近く、経営改革推進チームへの異動に対して上長が多くの場合、反対する。そこを説得できるかどうかも社長のコミットメントとリーダーシップ次第だ。本当のエースを引っ張り出すことはむずかしいので、1~2名は各部署のエースを、ほかのメンバーはNo.2人材を指名し、将来に向けての投資としてチームに投入することへの合意を取り付ける。

経営改革の課題とリーンスタートアッププロジェクトのタイプにもよるが、部署は企画、開発、生産、営業、管理等からまんべんなく集めることが望ましい。

最初はかなりの反対を押し切って進める必要があるが、順調に動き始めると、1~2年で本人が見違えるように成長するので、部門によっては、もっと育ててほしいと多めに人を送り込む動きも出てくる。

仕事ができるメンバーを集めても、すぐに活躍できるわけではない。プレーヤーとしては優秀でも、高度な支援能力を持っていることはあまりないので、以下のようなスキルアップトレーニングで徹底的に鍛え上げる必要がある。私が経営改革プロジェクトを推進する際にまず重点的にとり組む部分だ。

まずは、「基本的な問題把握・解決力強化」になる。事業部の経営課題を短時間で把握し、どこからどう取り組むべきか、効果的な施策立案が素早くできるようになる必要がある。これは経営改革支援能力の根本であり、一朝一夕に身につくことではないが、「ゼロ秒思考」のA4メモ書き、問題点深掘りトレーニング、フレームワーク作成、ホワイトボード活用等の基本をきっちりと実施し、スキルアップのベースを作る。

次は、「事業部長への支援スキル強化」だ。事業部長の悩みをよく理解し、支援・チャレンジしつつ信頼されるようになる必要がある。これに対しては、事業部長の悩みや期待をどう整理し、どう対応するかという基本のトレーニング、ロールプレイトレーニング、また、こういう微妙な立ち位置で不可欠なプロフェッショナリズムへの理解と強化に取り組むことになる。

さらに、「チームリーダーシップ強化」では、懐疑的なチームをリードしてやる気を出させるスキルが必要で、チームマネジメントのトレーニング、アウトプットイメージ作成アプローチのトレーニング、コーチングスキルのトレーニングなどをおこなう。

最後に、「コミュニケーションスキル強化」では、上司・同僚・部下の意見に真剣に耳を傾け、発言を引き出すことができ、かつ、わかりやすい説明ができるようにする。これに対しては、ポジティブフィードバック、アクティブリスニングのトレーニングや、短時間での報告書作成トレーニング、プレゼンテーショントレーニングなどが必要となる。

これらのスキルは、通常業務の中では意識的にトレーニングされることがあまりなく、社内で優秀と言われている部課長でも学ぶことが多い。

経営改革推進チームを結成してから数日間、こういった基本をきっちりとトレーニングし、チーム内に共通言語と問題意識共有を図ることが重要な出発点となる。ある程度のスキルアップには数ヵ月かかるが、目指すべきレベルを理解し、そこに到達する方法論を最初に学ぶことで、通常業務の中では得られない具体的かつ詳細なレベルの経営改革推進スキルが最速で身についていく。

プロジェクト支援を通した実践トレーニング

これまで紹介してきたスキルアップトレーニングを実施後、メンバーは既存事業の立て直しプロジェクトや、リーンスタートアッププロジェクト支援をしながら、実践トレーニングを受ける必要がある。ダイナミックなプロジェクト環境下で、どのように問題解決のリーダーシップを発揮しチームを支援するか、実践ならではの諸々の問題を解決しながら応用力をつけていく。

1つのプロジェクト単位を6ヵ月として、1つ目はほとんど見よう見まね、2つ目は少しだけ自主的に動けるようになり、3つ目になるとサブリーダー的にチームをリードできる。4つ目のプロジェクトは経営改革推進チームからの担当リーダーとしてプロジェクトを全面的に支援することができる。

3つ目まではプロジェクト推進経験のあるシニアメンバーとペアになって最速で学んでいく。6ヵ月のプロジェクトを3つ経験すれば、かなりの自信がつくが、決して簡単なことではない。どんなに優秀な人材も経営改革推進スキルをあまり持ち合わせていないので、段階を踏んで育てていくことが必要である。

「何とか頑張ってやり抜け」といった精神論が通用する世界ではない。社員がへたるだけではなく、そういう姿勢では経営改革そのものが空中分解する。あくまで、当初はプロの支援を投入し、最速で自立できるようにしていくことが望ましい。

社長にとっての右腕に

少し時間はかかるが、いったんこのチームができあがると、社長にとっては実に仕事がしやすい素晴らしい右腕になってくれる。既存事業の立て直しやリーンスタートアッププロジェクトにかぎらず、買収後の経営強化やホールディングカンパニー化などの難易度の高いプロジェクトも、経営改革推進チームメンバーを数名アサインすることで、最速で成果を出すことができるようになる。

経営改革推進チームに2~3年いたメンバーは、元の部署では考えられないほど成長し、次世代経営幹部として会社の牽引役となってくれることは間違いない。

 
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