SXSWとは
2012年3月9日から16日まで、米国テキサス州オースティンでSXSW2012(サウス・バイ・サウスウェスト)が開催された。1986年に始まったSXSWは初回700名だったが、現在では数万人以上集まる世界最大の音楽祭典だ。インターネットの発展を踏まえ、1998年からはインタラクティブ部門が始まった。
インタラクティブ部門には、昨年2万人が63ヵ国から参加、935のセッションが開催されたが、今年は、さらに成長し、速報値では3万5000人との話もあった。音楽・映画部門も含め、今年は25万人がオースティンに集結したと言われている。
インタラクティブ部門では、徒歩10分圏内の15のホテル、会議場を主要会場としてほぼ借り切り、3万5000人が一日中ワークショップ、セッション、トレードショウ、キーノートスピーチなどに参加して、渋谷のハチ公前程度の混雑が深夜まで続く。中心のオースティンコンベンションセンター(下の写真)は、1000名以上入るかと思われるホールが建屋の一部にしか過ぎないような巨大会場で、街の1ブロック全体を占めている。
新進ベンチャーの登竜門として、SXSW Interactive アクセラレータープログラムが2009年に開始された。今年は、650ものチームが応募し、モバイル、ソーシャルメディア、エンターテイメント等の6分野に8社ずつ、48チームがVC等の審査員へのプレゼン機会を得た。翌日の決勝では、6分野3社ずつの18チームがプレゼンし、分野ごとの優勝を決めた。申し込み費用はわずか$175であり、非常に敷居が低い。かつチャレンジ度は高い、理想的なものだ。
参加ベンチャー間の交流も活発で、こういう切磋琢磨かつベストプラクティス共有の機会から、有望ベンチャーがさらに競争力を増して巣立っていく。
部門ごとに表彰されるインタラクティブアワードは、Activism,Amusement,Art,Business,Classic,Community,Educational Resource,Experimental,Film/TV,Motion Graphics,Music,Personal,Social Media,Student,Technical Achievementの15部門からそれぞれ選出された。
毎年8月に募集、11月から審査が開始され、1月に各部門ごとに5つのファイナリスト(決勝進出)が選定される。日本からもベンチャー10社近くが応募したと思われるが、ファイナリストにまで残ったベンチャーは残念ながら1社もない。SXSW2013に向けての準備がすでに開始されている。
インタラクティブアワードの中では、デジタルトレンド特別賞(SXSW期間中に一番話題になったアプリ・サービスが受賞)が、SXSW内外で大きな話題を呼ぶ。
2007年にTwitter、2008年にFoursquare、2011年にはGroupMeが受賞した。今年は、写真コレクション・共有で日本でも人気急上昇中のPinterestだ。前評判では、人気ブロガーに押された、出会い系とも言えるHighlightの人気が高かったが、使いにくさ等の理由から脱落し、SXSW2012としては特に目立っていなかったPinterestが受賞したのは興味深い。
開催中見逃せないのは、一番ホットなアプリ・サービスの創業者やCEOが次々に講演をしてくれること。今年は、リリース6日で10万ダウンロード、1年半弱で2700万ダウンロードを達成したカメラ撮影・共有アプリInstagramの共同創業者2名が熱く語ってくれた。
AppStoreの審査通過後、リリースする前に著名なデザイナー100名に勝手に連絡し依頼したところ、予想外に多くの方に使ってもらい、バズを広めることができたとか、初日に25,000ダウンロードを達成し、これは来るぞと思ったとか、サーバー負荷の大変さ等、裏話をすぐ目の前で聞くことは、記事で読むのとは断然違う迫力だ。
スタンフォード大学卒業生の二人のまだ初々しさの残るストーリーは、モバイル先進国の日本だからこそ、スマートフォンの大ヒットアプリが絶対出せるはず、絶対出すべき、という気にさせてくれた。
また、5000万以上のユーザーを持つファイル保存・共有アプリDropBoxの創業社長、ドゥルー・ハウストンのトークセッションも印象的だった。
5歳からプログラミングを始めた天才ハッカーにより生み出されたDropBoxは、スティーブ・ジョブズからの買収提案を蹴ったことでも有名だが、3600億円の時価総額評価で、200億円の資金調達をし、話題を呼んだ。
競合相手が無数にいる中に2007年に参入し、高い技術力で一気に頂点に駆け上った。4%の課金ユーザーからの収入が200億円に達している。Y Combinatorの最優秀卒業生として有名で、Y Combinatorについては、近々詳細にご報告する。
デジタルトレンド特別賞を取ったPinterestの創業社長の控えめな人柄にも親しみを感じた。リリース後、わずか数年で1100万ユーザーを獲得し、1月には、米国での月間ビジター数が1600万人を超えた。Facebook、Twitterにつぐ影響力を持ち始めたと言われている。APIの公開も間近で、プラットフォーム化が着々と進んでいる。
ナプスター創業者でFacebook初代社長であったショーン・パーカーと、米元副大統領のアル・ゴアといった大物対談を目の当たりにできるのも、SXSWの魅力だ。
米国におけるSXSWの貢献
IT、モバイル、ソーシャルメディアの事業、マーケティング、投資に関心のある数万人が毎年オースティンに1週間集まり、無数のセッション、ワークショップ、パーティーを通じて知り合い、商談を行う。新しい考え・アプローチが発表され、共感され、試され、広まっていく。このメカニズムと規模は尋常ではない。
多くのインターネットベンチャーが毎年3月のSXSWに焦点をあてて、サービスを開発し、何ヶ月も前からプロモーションを行い、口コミを広げ、乗り込んでくる。SXSWがそれらの活動に対し、最高のお披露目の場を提供している。お披露目だけではなく、投資家とベンチャーの出会い、最先端のアイデアの交換、チーム作りがここにある。
Twitter、Foursquareとも、SXSWの存在がなかったら、成長はずっと遅れたはずだ。昨年のGroupMeも、今年のPinterestも、SXSWの結果、事業展開が加速される。
米国のすごさは、シリコンバレーでのベンチャー創業の生態系が確立しているだけではなく、同様の動きがニューヨーク、ボストン地区でも起き、ここテキサス州オースティンでも起き、年1回、SXSWに結集する。各地域での活発な起業・起業支援活動と、SXSWという大祭典との組み合わせが、米国の新事業創造を加速させているのは間違いない。
SXSWへの日本からの参加
SXSWのメインイベントの一つであるトレードショウへの日本ベンチャーの参加は、2010年まではゼロ、2011年は8社、今年は一気に18社と急増している。日本からの参加者数も200名を超えた見込みだ。頓智ドット井口会長の旗振りで、昨年来、日本のベンチャー間では、SXSWへの意識が急激に高まっている。
昨年のキックオフイベントには300名以上が参加した。インタラクティブアワードにも、Interactive アクセラレータープログラムにも、昨年競って応募した。
この動きはさらに加速・拡大している。4/5(木)には、SXSW2012の帰朝報告とSXSW2013に向けてのノウハウ共有を目的とした大イベントを企画している。ご関心のある方は、ぜひご参加いただきたい。
私が運営統括をしているブレークスルーキャンプ by IMJは第1期であるWinterプログラムとして5社への出資を確定したが、4/1に募集開始するSpringプログラム以降、SXSW2013に10社以上参加すべく、世界で勝つ有望ベンチャーの発掘・育成をさらに徹底していく。
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