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決定的に広がる日米製造大企業の競争力! 「SXSW 2014」で感じた、イノベーションを生み出す環境づくりの重要性

決定的に広がる日米製造大企業の競争力! 「SXSW 2014」で感じた、イノベーションを生み出す環境づくりの重要性

SXSWとは

2014年3月7日~16日まで、米国テキサス州オースティンでSXSW 2014(サウス・バイ・サウスウェスト: ニューヨークから南南西の方向ということでの命名)が開催された。

1987年に始まったSXSWは、初回は700名程が参加した音楽祭典だったが、1994年に映画部門とインタラクティブ部門(当時の呼称はマルチメディア。インタラクティブという呼称は1998年から)が始まり、近年では数万人前後が参加するインタラクティブ部門が最大になっている。

今年は、1100のセッションに対して82ヵ国から3万3千人、568の出展がされたトレードショウには6万5000人が参加した。

中心のオースティン・コンベンション・センター(ACC)は、3500名入るホールが建屋の一部にしか過ぎないような巨大会場で、歩いて何分もかかる街の1つのブロックを占めている。ACC内を迷わず歩けるようになったら、SXSWがだいぶ楽しめるようになる。

メイン会場のACC内は、常に人であふれかえる。基調講演は先ほど説明した3500人が入る大ホールで開催されるが、入場するために45分ほど前から50メートル以上の列ができる。

img2決定的に広がる日米製造大企業の競争力!

 

基調講演にはチェルシー・クリントンやレディー・ガガらが登壇

インタラクティブ部門では、ACCを含む徒歩10~20分圏内の20以上のホテル・会議場で一日中、基調講演、トークセッション、パネルディスカッション、ワークショップ、トレードショウ、ビジネスプランコンテスト等が行われる。

同じ時間帯に数十のセッションが開催されるため、スケジュール一覧を綿密に研究し、アンテナを最大限高くし、特別の工夫をしないと、関心分野のセッションを見逃してしまう。ときにはセッションのはしごも必要になる。

SXSWでの基調講演は毎年大変注目されている。今年は5人の基調講演の一人として、第42代アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンとヒラリー・クリントン夫妻の一人娘である、チェルシー・クリントンが登場した。

彼女はクリントン基金の副会長として運営に携わっている。ビル・クリントンやヒラリー・クリントンが携帯のメッセージの送り方や充電の仕方がわからないので教えた、といった話を前置きとして、世界中で毎年、75万人の子ども達が下痢による脱水症状で亡くなっており、到底、許容しがたいことだと訴えた。

米国ではきれいな水を飲めるからこのような問題がなくなったが、世界ではいまだに深刻で、技術はもっと人類の発展のために使われなくてはならないと訴えた。

チェルシー・クリントンがSXSWのメインイベントである基調講演に呼ばれた理由は、SXSWの聴衆が前にも増して、「技術による社会貢献」に強い関心を持つようになったからだとSXSWのディレクターが説明していた。

img3決定的に広がる日米製造大企業の競争力!

SXSWインタラクティブ部門の直後には音楽部門が開催されたが、その基調講演にレディー・ガガが登場し、喝采を浴びた。SXSWの全体の雰囲気がよく伝わってくるので、英語で1時間の講演ではあるが、できれば視聴していただけるとよいと思う。

基調講演のもう一人には、米国の有名な天体物理学者であるニール・デグラッセ・タイソンが登場し、科学技術、宇宙、そして人間の大切さについて訴えた。

SXSWインタラクティブ部門では、科学技術の大切さを訴え、国民の関心をより高めようという事務局および国としての意思がだんだん強くなってきたのではないかと感じる。

 

基調講演ではないが、それに準ずる講演として、セグウェイの発明等で著名な発明家ディーン・カーメンは、毎日1000リットルの汚染水を浄化できる運搬可能な浄水器の発明・開発と、国際的な普及について語った。

きれいな水が飲めない貧しい国々で毎年多くの子ども達が亡くなっている問題への答えであり、チェルシー・クリントンの講演にも通じる。

 

この浄水器には、燃焼効率が理論上最も高いとされるスターリングエンジンが組み込まれ、牛糞で6ヵ月稼働する。フィルタ不要で、5年間メンテナンスなしで浄水できる画期的なものだ。

ディーン・カーメンが浄水器を発明、開発し、コカ・コーラがガーナやパラグアイ等への設置に協力している。

img4決定的に広がる日米製造大企業の競争力!

 

彼はさらに、青少年の科学技術への関心を高め、育成するための組織、「FIRST」についても話した。FIRSTの創設者、推進者として、科学技術の振興活動を続け、実践教育を進め、米国の競争力向上に大いに貢献している。

FIRSTではロボット競技大会を開催し、今年は世界66の地域での競争を勝ち抜いたチーム、小中高校生12000人が4月にセントルイスに集まった。日本からも奈良教育大附属中のチームが日本代表として参加した。

ディーン・カーメンの講演や活動を見ていると、米国が国家レベルでイノベーションを生みだし続けるための環境づくりにいかに注力しているかを強く感じる。この点、泉田良輔氏が「本当は残酷なイノベーション、覚悟なき日本は低迷」という記事で鋭い指摘をしている。

「米国はイノベーションを生み出すのに立て続けに成功しているように見えるが、現在のような好循環に持ってくるのに20年以上を必要としたとみている。1980年代半ばから1990年初めにかけて、米国の製造業は電機、半導体、自動車分野において日本企業に追い詰められていった。

その期間に、米国は「産学官」をあげて米国企業の競争優位について分析し、それは研究開発と既存の競争のルールを変え続けるイノベーションにあると判断した。イノベーションを生み出すことに軸足を置くことを決めた米国といまだイノベーションを受け入れる準備ができていない日本(以下、略)」という表現で、実に当を得ている。

img5決定的に広がる日米製造大企業の競争力!

※上図は著者作成

1980~90年代がピークだった日本企業

イメージを掴んでいただくため、あえて図にしてみると、上記のような流れになる。横軸は時間軸を1950~2020年にとっている。

縦軸には相対的産業競争力をとった。日本企業の競争力が戦後直後から高度成長期にかけて急激に高まり、1980~90年代にピークに達し、韓国、台湾、中国、インド企業の台頭とともに自動車、建設機械等をのぞいて競争力を落としていった状況を描いた。

一方、米国企業は、GM、フォード、クライスラー等の自動車産業、RCA等の家電産業の競争力は、日本企業の競争力向上と対照的に落ちたが、国家的レベルでの必死の努力の結果、インテル、マイクロソフト、シスコ、オラクル、アマゾン、Facebook等、多数の世界的企業を輩出し、急激に立て直した。

情報化、システム化、プラットフォーム化、ビッグデータ活用等により、ここにきて、日米製造大企業(IT企業を含む)の競争力の差は決定的に広がり、さらに急拡大しつつあると考えている。

こういった問題意識を踏まえ、次回以降、SXSW2014で注目すべきキーワード10についてカバーしていきたい。