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部下とのコミュニケーションをとる ~「世界基準の上司」を目指して(第4回)~

部下とのコミュニケーションをとる  ~「世界基準の上司」を目指して(第4回)~

できる部下も、できない部下も悩んでいる

部下の気持ちへの配慮と部下とのコミュニケーションの巧拙が、上司の役割を果たす上で決定的に影響する。

部下には常に悩みがある。新しい仕事に取り組む際、「どこからどうやって進めたらいいか自信がない」「上司に何もかも聞くことはもちろんできない」「同期がまた先に昇進した」「他のメンバーと折り合いが悪い」「新しい上司が何を考えているのかわからず、不安だ」などなどだ。悩みがない、ということがほぼなく、常に多かれ少なかれ悩んでいる。

できない部下は、悩みがより深い。「会社にいつまでいられるかわからない」という悩みは生活の基盤がかかっているので、より不安になる。上司に叱られることも多く、職場によってはかなりいたたまれないようなところもあるだろう。そういう部下に限って、家に帰ると家族とぶつかっていたりする。仕事上の悩みだけではなく、家でも悩みが多くなる。

できる部下も、もちろん悩みがある。「今の仕事をしていていいのか」「このままやっていて、夢だった留学に本当に行けるのか」「もっと成長するために自分は何をすべきか」など、やや前向きな悩みかもしれないが、本人にとっては深刻だ。気持ちの上の深刻さは、できない部下と大差ない。

上司に打ち明ける悩みはごく一部

ところが、どんなに悩んでいても、部下が上司に打ち明ける悩みはごく一部でしかない。自分の生殺与奪を握っている上司に対して、全部を打ち明けることは賢明ではないので、当然のことだ。

だから上司は、部下からの相談に対しては、常に全体の1~2割しか話してもらっていないという前提で聞く方がよい。決して全部を話してくれてはいないと思えば、より真剣に聞いて全体像を把握しようと思うし、判断もより慎重になる。よりよい解決策を考えるきっかけにもなる。

悩んでいる部下の視点は、普通の精神状態のときよりも狭くなっている。「誰が何を言った」とか、「こういう扱いを受けた」などの内容が片寄りがちなので、裏取りをし、他の人の意見にも気をつけながら全体を把握して、バランスの取れた助言をすることが必要になる。

そうしないと、上司として後で恥をかくような間違った判断をしてしまうことがある。「え? 聞いていたのと話が違うぞ。まさかそんなことだったとは!」という感じだ。

部下に悪気が全くなくても、きちんと伝え切れないことが多いため、上司がよほど慎重で経験豊富でないと、部下を間違った方向にリードしてしまうこともある。

上司は常に聞く耳を持つこと

部下が真正面から悩み相談をしてくることは、普通はそれほどない。上司への相談は何かと気が重いからだ。下手をすると過剰反応されてしまう。あるいは同僚にとばっちりが行って面倒なことになる。あるいは、自分に対してネガティブな印象を持たれるかもしれない。あれこれ考えると、うかつに相談もできない。そう思って二の足を踏むことが多い。

むしろ、ちょっとしたため息や、ほんのちょっとした言葉の端々に部下の悩みが漏れる程度ではないだろうか。

といって、そういう場合、部屋に呼んで話を聞こうとしても、そう簡単には聞き出せない。迷いに迷った結果、混乱してうまく話し出せない人も多い。どぎまぎして何か口走ってしまうのではという心配のあげく、黙り込んでしまうこともあるだろう。

別室に呼ぶこと自体、チームの皆が注目し、多くの場合、余計に問題をこじらせたりする。本人がいじめられたり浮いていたりする場合は特にそうだ。カモフラージュするためには、普段から個別に面談をしておくことで、その面談が特別視されないような工夫も必要になる。

飲みに誘ってお酒の力を借りて話してもらうという手もあるが、人によってはそういうコミュニケーションを嫌うので、万能ではない。上司として尊敬されていればあまり問題ないが、そうでもない場合は、飲みに誘うことはそれほど効果的ではない時代になった。

「部下を飲みに誘ったら、残業代がつくのか質問された」という話も、決して笑い事ではない。以前ならやや強引に誘い、二人で三次会まで行ってわだかまりが完全に解消した、などというような話もあったかもしれないが、最近は中々そういうふうにはいかない。

したがって、普段から部下のモチベーションがどのくらい強いか、悩みがどの程度か、よく観察しておくことが大切であるし、複数の情報源に気を配り、かつチャンスを逃さないため、常に聞く耳を持っておく必要がある。

無理にこじ開けない。貝は一瞬にして閉じる

上司は、部下の言動が気になっても、あまり問いただすわけにはいかない。自然に部下が話すのを待つ。友人なら当然もっと気軽に話すことでも、上司に対しては抵抗が大きい。年が近ければプライド等も影響するし、離れていれば話が通じないのではということで、やはり抵抗がある。

したがって、悩んでいる部下には、問いただすのではなく、寄り添い、話す気になったら話を聞いてあげるという程度のスタンスがいい。相談されたからといって、話が続かなければ無理に聞き出そうとはしない方がいい。

いい気になって妙に詮索しようとすると、貝は一瞬にして閉じてしまう。「あ、この人だめだ。理解してくれない」とか「なんか波長が違いすぎる」とか、「あ~あ、言わなければよかった」となってしまう。「さっき話があるというから時間を取ったのに」「あきらかに悩んでいたから聞いてあげたのに」とぼやいても遅い。そのくらい微妙な間合いだ。

こういうと、ずいぶんむずかしそうに感じるかもしれないが、実はそれほどむずかしいわけではない。あくまで部下が話し始めるのを待つ、というだけのことだ。ただ、待ちながら「早く言ってくれ。こっちは忙しいんだ」と心の中でイライラしていると、相手に伝わってしまう。時計をちらっとでも見ない方がいい。相手が遠慮して、「もういいです。すみません。時間を取らせて申し訳ありませんでした」で終わってしまう。

「のんびりと待つ、あせらずに待つ」という方が急がば回れだということは、しっかりと覚えていてほしい。15分も20分も待つというようなことではない。長いようでいてほんの数分もたてば、少しずつ話し出してくれる。相手をあせらせない、煽らない、早く話せとプッシュしない、というだけのことだ。

本人以外から聞こえてくる場合も

部下の悩みは、まずは同僚に伝わる。同僚には本人から話す場合もあるし、一緒に過ごしている時間が長いので、隠しようがなく伝わってしまうということもある。「最近元気がなさそうだ」とか「ランチを食べに行っても半分くらい残している」「週末も外出せずに一日寝ているらしい」といった情報は、上司より同僚の方が早く把握できる。

したがって、部下とのコミュニケーションがうまくできている上司の場合、特定の部下の悩みに関しては、同僚の方から発見・把握し、伝えてくれる場合もある。信頼関係があれば、当事者でない分、その方が全体像を早く話してくれることもある。その時の応対の真剣さ如何で、部下からの信頼はさらに深まる。

ただ、場合によっては、本人の同僚に話を聞くという行為自体がネガティブな影響を与えることもありうるので、細心の注意を払い、慎重に進める。話をあまり真剣に聞けばこちらの心配が同僚に伝わり、話に耳を傾けなければ、この上司は鈍感で話が通じないというふうにも取られる。

ということで面倒は面倒であるが、慣れればそれほどむずかしいことではない。自然体で状況を観察し、部下とのコミュニケーションを普段から丁寧に行っておくだけのことだ。

「酒の席は無礼講」は通じない

「酒の席は無礼講」ということで、飲みにつれていき、「いいからまず飲め。遠慮なく話せ」というアプローチを取る上司もいるかもしれない。以前は多かった。

ただ、このやり方はすでに古いと思われているし、部下の警戒心が強くてあまり通じないと思った方がいい。「酒の席は無礼講」と言っておきながら、それに油断して本音で何でも話すと上司が全部覚えていて大変なことになる、と理解されている。

上司としては、お酒に関しても、自分が慣れ親しんだやり方はあまり通じないという前提で、柔軟に対応することがどうしても必要な時代になった。

部下が若かったり、女性だったり、外国人である場合は特に注意する必要がある。お酒の力はあまり借りない方が無難だ。