若手コンサルタントのShinさんが運営するオンラインコミュニティ「Players」にて、先日オンライン対談を行い、若手社会人に向けたメッセージをお話しました。Shinさんの運営するブログ「Outward Matrix」で掲載されている内容をこちらでもご紹介いたします。
『ゼロ秒思考』出版秘話
Shin:本日はよろしくお願いいたします!
赤羽さん:よろしくお願いします。
Shin:まずは簡単にご経歴をお話しいただけますでしょうか。
赤羽さん:東京大学工学部機械工学科を卒業し、その後コマツ製作所に入社しました。コマツには8年間エンジニアとして在籍しましたが、その中での2年間は社内留学制度でスタンフォード大学に留学していました。スタンフォード大学から戻って1年間したところで、ヘッドハンターから電話がありました。
赤羽さん:実はその電話は私ではなく上司にかかってきたものだったのですが、たまたま上司が席におらず、私が電話を取り、それがマッキンゼー入社のきっかけとなりました。マッキンゼーのことは正直ほとんど知らなかったのですが、大前研一さんの本を何冊も読んで感銘を受け、入社を決めました。その後、合計14年間マッキンゼーに在籍しました。
赤羽さん:その後、2000年に米国のベンチャーキャピタルに入社し、日本と韓国のベンチャーへの出資に取り組み始めたのですが、そこは1年で辞めました。その後ブレークスルーパートナーズ株式会社を創業し、今まで続けています。この会社は大きく分けて二つのビジネスを実施しています。
- 数週間ディスカッションを重ね、新しい事業構想を一緒に作りあげ、「これはいけそうだ」という場合に共同創業し、10%を出資させていただき、支援する
- 大企業から依頼を受けて経営改革を実施する。マッキンゼーなどの大手コンサルティングファームより具体性があり、かつ低コストで実施が可能
赤羽さん:「ゼロ秒思考」は私の初の著書で、2011年にたまたま私がアプリ開発コンテストにて「A4メモ書き」を参加者の方々にお伝えしたところ、その運営事務局の方が「これはおもしろい」と出版社の方に連絡をしてくれて、すぐに出版が決まったのですが、実はその後出版までに2年間もかかってしまいました。幸いなことに増刷が何度もかかり、今は17万部ほど売れているという形です。
Shin:2年間・・・!その頃はだいぶお忙しかったということでしょうか。
赤羽さん:いえ、忙しさとは関係ありませんでした。単純に文章を書くのがあまり得意ではなく、本を書く自信がなかったというのが大きいです。「書こう書こう」と思ってはいるものの、寝てしまったり2行ぐらい書いてストップしてしまったり・・・というのが1年半ほど続きました。「さすがにこれではまずい」と思い、最後の3か月から半年で一気に書き上げたという感じですね。
Shin:赤羽さんでもそんなことがあるんですね。
赤羽さん:意外に思われるかもしれないですが、今でも実は文章を書くのが大好きというわけではありません。18冊の本は出していますし、本を出すスピードも上がってはいますが、これは「書き方を工夫した」というところが大きいかもしれません。
じゃんけんに勝ってスタンフォード留学!?
Shin:赤羽さんの著書では、赤羽さんが20代のころの話はあまり出てきていないと思うのですが、どのように20代を過ごされていたかお伺いしてもよろしいでしょうか。
赤羽さん:20代の時はコマツで働きつつ、スタンフォード留学をしていましたね。特に仕事で悩んでいたわけではないですが、特別自信があるわけではありませんでした。ごく普通の20代だったと思います。
Shin:最初からめちゃくちゃ優秀だったからこそスタンフォード大学に留学されたのではないのですか?
赤羽さん:実はそういうわけではないのです。3年目のときに留学生制度ができたので、「受けなきゃ損だ」と思って手を挙げてみました。で、申し込んだらなんと全社で5名しか申込者がおらず、じゃんけんで勝った3名が選ばれ、負けた2名はその翌年にいくことになったのです。
Shin:そんな時代があったのですね・・・!笑
赤羽さん:そもそも「スタンフォード」の名前も知れ渡っているわけではなかった時代なんですよね。
Shin:赤羽さんとして一番成長したきっかけ、現在の活躍の基礎が築かれたのはいつなのでしょうか。コマツ製作所時代なのか、スタンフォード留学なのか、マッキンゼーなのか。
赤羽さん:私はもともと小学校から勉強ができ、高校に入った時点で「東大に行く」と決めていました。なので、そこまではまあ優秀なほうだったと思いますが、大学では凡人になってしまいました。大学では「アメリカンフットボールしかしない」と決めていたので、勉強はそこそこしかしませんでした。理系なので実験等はありましたが、大部分の時間はスポーツに捧げていました。
赤羽さん:スタンフォードに留学したときは、あまりにも大学時代に勉強していなかったので、必死に追いつこうと勉強しました。足りないものを補うための努力でしたね。そうしないと卒業できないので。マッキンゼーから話があったときも、「よりよりチャンスが来たら受ける」という価値観のもとにチャレンジしたのですが、最初の1年は苦労しました。そこから本当の成長が始まったと思っています。
Shin:コンサルティングファームに中途入社すると、最初非常に苦労するとよく言われますが、赤羽さんの苦労はどのようなものだったのでしょうか。
赤羽さん:いきなり日本の大企業の経営改革プロジェクトにアサインされたのですが、分析の方法やチャートの書き方、クライアントとのディスカッションの方法や対象業界の専門知識もなかったので、まずは15~20冊を2日くらいで一気に読んで、なんとか知識を入れたという形でした。
赤羽さん:もちろんそれだけではうまくいかず、先輩から多くの指摘を受けました。「分析とはこういうものだ」「お客様とのディスカッションはこうやって進めていくんだ」等々、それを書き留めていく中でゼロ秒思考の原型が生まれました。五月雨式にいろんなものを吸収しなければいけなかったので、あとでまとめやすいA4メモに書き留めていました。
チャンスが来たら迷わずに掴み取れ!
Shin:もし赤羽さんが今の時代の若者だったとしたら、どのような活動をされるでしょうか。
赤羽さん:高校生の時からプログラミングをはじめていたでしょうね。向いていなければやめるかもしれませんが、それが向いていたら起業していると思います。想像の話なので、なんともいえないですけどね。
赤羽さん:何かのチャンスが降ってきたときに、「自分にできるかできないか」ではなく、チャンスがあったらとにかくそれをつかんでいくことが大事なのではないでしょうか。4日前にウズベキスタンからの経営支援をしてもらえないか、という話が来たのですが、即答で「やります」と答えました。また、3年前にはインドのバイクメーカーから経営支援をしてほしいといわれたのですが、それも即答でYESといいました。
赤羽さん:通常であれば怖気づくところでも、迷わず飛び込むことは若いうちからずっと続けていました。もちろん、「本当にうまくいくのだろうか」「自分で大丈夫なのだろうか」と思わないことはないのですが、そのような懸念があったとしても、チャンスがあったら必ずYESという。そういう姿勢は今も昔も変わりません。今の若い人も、そのような積極的なスタンスを持つと、どんどん成長できるのではないでしょうか。
Shin:とはいっても、一歩踏み出せない人が大半ですよね。
赤羽さん:そうですよね。ただ、それは言葉を選ばずに言うと「甘えているだけ」だと私は考えています。怖いのはもちろんわかるし、自信がないのもわかるのですが、20代前半から常にチャレンジし続ける姿勢、チャンスにYESという姿勢はぜひ身に着けてほしいです。途中で挫折することはもちろんあると思いますが、手を挙げること、やりぬくことができたら、「ただ優秀な人」を超えた成果を出すことができると思います。
「やりたいこと」を探すのではなく、目の前のことで成果を出そう
Shin:現在は仕事の幅が広がっていて、それに応じて「やりたいことがわからない」「何が好きなのかわからない」という悩みを持つ方が多いと思うのですが、そういう質問にはどうやって答えられていますか。
赤羽さん:私自身も特段やりたいことがあったわけではないのです。コマツには「建設機械、特にブルドーザーの設計開発に携わりたい」という動機で入社したのですが、入社したらダンプトラックの設計をすることになりました。ブルドーザーとダンプトラックは、エンジニアにとっては全然別物です。
また、スタンフォードに留学したときも、「海外留学を若いうちにしておけば自分の身になるだろう」と思っていただけで、勉強が大好きだったわけではありません。マッキンゼーも面白そうだから入社しただけで、経営がとても好きだったわけではありません。
赤羽さん:ですから、「やりたいことがわかりません」「好きなことがありません」という相談を受けたら、「それは実は大事なことではないと思います。重要なのは、今やっていることに真剣に打ち込んで成果を出すことですよ」とお答えするでしょうね。
Shin:なるほど。今やっていることに集中して成果を出し、その中でまた新しいチャンスが来たら即答でYESといってさらなる成長を求める、という繰り返しで力をつけていけばよいということですね。
赤羽さん:まさしくそうです。誰にでもチャンスは訪れるものなのです。そのチャンスが来たときに全部とらえられるかどうか、さらにそのチャンスを最大限に生かせるかどうか、が分かれ目だと考えています。
Shin:ありがとうございます。
Shin:今の時代、サラリーマンも会社にしがみつくことをリスキーだと考えていて、プライベートの時間を使って自分で収入を得ることが流行し始めているように思います。先ほどのお話からすると、副業に中途半端に手を出すよりは、本業で成果を出すべきだとお考えでしょうか。
赤羽さん:もし現在、どうひっくりかえっても将来性がない仕事に従事しているのであれば、そこから抜け出すために副業をやるというのは大いにアリですよね。その仕事に将来性があるのかどうか、というのは自分ではなかなか判断しづらいので、周りの何人かの方に相談してみるといいでしょう。
赤羽さん:将来性がある仕事をしている人であれば、まずは本業に全力投球していくことをおすすめしますね。それで結果が出たり昇進して手ごたえを感じたら、副業をやってもいいかもしれないですね。
金融投資で人生を充実させることは難しい
Shin:赤羽さんのお金に対する価値観を伺いたいです。貯金をすべきなのか、金融投資をすべきなのか、自己投資をすべきなのか、赤羽さんのご意見を知りたいです。
赤羽さん:若干余裕のある方は、資産形成への感度を高めるために、少額で金融投資の勉強を始めればいいと思います。非常に熱心であれば、「サラリーマン大家」的な投資もありですね。
赤羽さん:毎日過ごしていくのが必死にならざるを得ない程度の収入しかない場合は、「本当にそのままの仕事でいいのか?」と自問自答したほうがいいでしょうね。みなさん、本業でどの程度のランクまで行きたいのか、どのレベルの年収が欲しいのか、一度しっかりと考えたほうがいいのかもしれません。
Shin:なるほど。ということは、「本業での出世はある程度でいい」と割り切って、金融投資や不動産投資で収入を確保するという道もなくはないということですね。
赤羽さん:あるかなしかでいえばありですが、サラリーマンへの融資は厳しくなってきていますよね。仮想通貨もバブルが終わってしまったようですし、「投資で人生を充実させる」というのはあまり確実性が高くないと思っています。
赤羽さん:実は、私も過去に株式投資にハマった黒歴史があります。今は金融投資ではなく、スタートアップ企業に創業時から参加しています。もちろん、金融投資の才能がある人はいなくはないのですが、20人に1人もおらず、他の19人はほとんど損をしてしまうのではないかと思います。
「本を読むだけ」は今すぐに卒業しよう
Shin:赤羽さんの読書法についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
赤羽さん:「アクションリーディング」という本で書いたのですが、本はただ読むだけではあまり意味がないのです。楽しみとして読むのであればいいのですが、「何かを身に着ける、学ぶ」という文脈においては、読むだけではなく「チャレンジシート」というものに、「何がよかったのか」「何を学んだのか」をしっかりと書いて、周りと共有するというのが大事ですね。
赤羽さん:「本を読むのはいいことだ」と思われがちですが、いくら読んでも自分の行動や成果に直結しなければ、そこまで意味がありません。「読めば偉い」という思い込みは捨ててほしいですね。
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