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経営改革を進める第6の鍵: 部下育成への意識づけとノウハウ共有—上司・部下の意識・行動改革

経営改革を進める第6の鍵: 部下育成への意識づけとノウハウ共有—上司・部下の意識・行動改革

→ Read English translation: The Sixth Key: Innovation in Boss-subordinate Relationship

経営改革を進めるには7つの鍵を同時に開けること」という提案をさせていただいた。今回は「経営改革を進める第6の鍵: 部下育成への意識づけとノウハウ共有-上司・部下の意識・行動改革」について、くわしくご説明したい。
組織は社長から一社員まで、すべて「上司と部下」の組み合わせでできている。多くの部下にとって、直属上司が会社以上に大きな存在であり、行動を規定する。部下は、上司によって育ちもするし、苦しみもする。

経営改革に際しては、会社の新方針・新しい経営のあり方を社長からおろしていくため、それぞれの上司がそれぞれの部下にどのように伝え、どういう態度で発するかが決定的な差を生む。

部下育成に関する問題

筆者の仕事柄、多くの執行役員や部課長に接するが、部下育成に本気で取り組み、時間をかけている上司はごく少数だと感じている。皆、自分の仕事をやり遂げることや、自身の上司への報告、膨大な書類作成に神経を使い、部下の育成まで気が回っていないようだ。気持ちがないわけではないが、何しろ時間が足りない。できなければ、叱りつけはする。もちろん、「ああしろ、こうしろ」とは言っているが、うまく伝わっているか、わかってくれているかというと心もとない。「部下育成に最善を尽くしているか」と問われれば、「はい」とは言いづらい。

部下育成の時間を意識して取り、長所をきちんと褒め、成長課題を適切な形で伝え、一人ひとりの成長を最大限加速しようとする姿勢で部下育成に取り組むことは、ほとんどできていないのではないか。何かあったとしても行き当たりばったりだ。

「部下育成は上司の役割だ」と重々承知していても、仕事を次々に振る以外、具体的にどうすれば部下が育つのか、必ずしもよくわからない。見よう見まねと自身の体験しかない。難しすぎる仕事を与えればつぶれそうになり、ちょっとやさしいといい気になる。簡単な仕事も早々あるわけではない、ということで仕事の与え方ですら悩みが多い。

「申し訳ない」と少しは思うものの、「部下を手足として使っているかも知れない」と思う上司は多いだろう。「でも、自分自身もそういう感じだったし」という逃げもある。当然、管理職研修で基本を教えてもらったが、日々の仕事ではどうも消化しきれない。

本当は、部下を持つ部長同士、課長同士、部下育成のノウハウ、苦労を共有し、助言しあえばかなりの知恵がたまるが、お互いへの牽制、競争意識もあり、ほとんどおこなわれていない。

もちろん、例外的に素晴らしい上司がいる。仕事もよくできて尊敬を集め、部下にも手本を見せつつ、効果的な助言を折りに触れおこなっている。ただ、そのスキル、ノウハウが共有されず、会社全体で見たときには、上司・部下のばらつき、部下育成のばらつきが非常に大きいままになっている。

上司・部下の意識・行動改革の進め方

部下育成は、実はそこまでむずかしい話ではない。普通の執行役員、部課長でも、ある意識づけとトレーニングを通じて、短期間に劇的に改善することができる。

また、部下育成は上司だけの問題ではなく、上司も部下も同時に意識・行動改革をすることが必要であるため、「上司・部下の意識・行動改革」と呼ぶプログラムを開発し、これまで多くの会社で実施してきた。即効性があり、参加者の気付きが大きく、業務上の負担もあまり大きくないものなので、ここでご紹介したい。

例として、部長が全部で100名の企業で、上司として部長、部下として各部の課長を対象とする場合を考える。部長100名を5名ずつの20グループに分ける。なるべく部門をまたがる方がよい。各グループごとに、4ヵ月にわたって毎月1回、計5回集まり、それぞれの部下3名ずつの育成について発表し、議論する。

開始前には、部下3名それぞれの強み、成長課題、成長目標、本人の取り組みと上司からの支援を「経営改革を進める第5の鍵」でご説明した業績・成長目標合意書に整理し、本人と合意する。

第1回には、その内容をほかの4名の部長に説明し、助言を得る。その後の4ヵ月間、残り4回の進捗ミーティングでは、部下育成にどう取り組んだのか、どういう成果があったのか、どういう失敗があったのか共有し、刺激しあう。4ヵ月間に渡り、上司・部下のペアで真剣に部下の成長に取り組むことで、意識・行動改革が進む。毎回のミーティングの前後には、上司と部下は10~15分でいいので面談し、課題への取り組み状況を確認する(このちょっとした時間が実は大変有意義なものになる)。

この4ヵ月間のプロセスで、部長の間で部下育成へのノウハウや失敗事例を共有できることで、初めて部下育成のイメージがつかめ、自信もつく。誰も同じ悩みを抱えていることを知り、気が楽になる。それだけではなく、部門を超えて参加した部長間にも一体感が生まれ、経営改革への機運が盛り上がる。

部下は部下で、上司が本気で育てようとしてくれている、気にかけてくれている、と感じることで発奮するし、上司や会社への感謝の気持ちも生まれてくる。尊敬できる上司が経営改革に取り組もうとしているのを見て、自分も課長としての責任を果たそうとしてくれる。

さらに、部門をまたがる部長間で問題意識や悩みを共有することで、通常業務においてもお互いのコミュニケーションが大幅に改善される。信頼関係が強化され、仕事全般にわたってチームワークが強化される。会社全体の風通しとフットワークがよくなる。

上司・部下の意識・行動改革プログラムを実施する上での注意

以上に述べたように、上司・部下の意識・行動改革プログラムは即効性があり、ぜひともおすすめしたいが、実施する上では若干の注意点がある。

5人ずつのグループでのディスカッションには、プロのファシリテーターが必要で、部下育成のノウハウ、ヒントを適宜伝える必要がある。そうしないと、ただの愚痴の言い合い、不満のぶつけ合いになる。「お前のところの課長も言うことを聞かないのか。あいつら本当にだめだよな」と言った低次元の話になってしまう。

ファシリテーターの役割は、上司の問題、部下の問題、上司・部下間の問題を立ち所に見抜いて切り分け、適切な助言をして、前向きな問題解決を図ることにある。

多くの場合、悪意は誰も持っていないものの、ちょっとしたことからボタンの掛け違いや、巡り合わせの悪さが生じているので、そこを解決していく必要がある。言うべきことを遠慮したり、加減がわからなくて言い過ぎたりすることも止めなければならない。感情のもつれもほぐす必要がある。

私がお手伝いする場合は、最初はすべて私がファシリテーターを実施し、人事部メンバーに見本を見せ、トレーニングして徐々に社内ファシリテーターを養成して、引き継いでいく。「生兵法は怪我のもと」なので、実施をお考えの場合は、ぜひご連絡いただきたい。

 
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