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経営改革を進めるには7つの鍵を同時に開けること

経営改革を進めるには7つの鍵を同時に開けること

→ Read English translation: Need Seven Keys to Start and Accelerate Management Innovation

経営改革とは

企業は、成長し続け、あるいは生き延びるために経営努力を続けている。ただ、ちょっとやそっとの改善ではどうしようもなくなった時、断固として経営改革に踏み切る必要がある。日常の経営活動を超えた、もっと抜本的な取り組みだ。

需要が一巡した時、顧客ニーズが変わった時、競合が追いついてきて独自性が出せなくなった時、大企業が参入し市場構造が一変した時、社内が慢心し膠着状況に陥った時、事業の根本から見直し、新たな成長路線を全力で探さなければならない。

それができない企業は、あっという間に淘汰される。世間の誰も信じられない、自分たちはもっと信じられない形で市場からの退出を余儀なくされる。

経営改革が中々進まない理由

社長がどんなに危機を訴えたとしても、役員も社員ものんびり従来通りの仕事を続けていたり、当事者意識を持たなかったりすることがよく起きる。

どういう危険が迫っているか、それが実際どれほど恐ろしいことなのか、社員が理解できる形で情報共有していないことが多いからだ。そして、社員が当事者意識を持てるように扱っていないからだ。普段から社長が号令をかけるだけで、役員・社員に本当の意味で考えることをあまり要求していないからだ。当の社長は自身のコミュニケーションと指示の悪さに気づいていないので、役員・社員に対して強い不満を持つ。ほとんどが自分の責任なのに。

また、よくあることであるが、当面の売上低下を一過性のものと見てしまう。何年も右肩下がりだとしても、そろそろ挽回できるのではないかと考える。構造的に挽回の余地が少なく、壁に当たっていても、ほとんどの人は目をつぶる。

社長以外、会社の危機を考え、断固として行動できる人は中々いない。そういう動きをしただけで左遷・降格される例を多く見ているからだ。社長自身も断固として行動できるかというと、サラリーマン経営者の場合、かなりあやしい。オーナー経営者も三代目くらいになると微妙だ。

既存事業の立て直しをしようという根性のある人はもちろんいる。ただ、かつては有能だった社員も在職年数と肩の上の荷物の大きさとともに官僚主義に染まり、保身に走ることで、改革の芽をつぶす。よかれと思い、その人なりの善意で取り組むことで、実際は新しい動きを封じてしまう。その方が、目先では間違いなく楽だ。

新事業を立ち上げようにも、社長がコミットし、既存事業からの圧力・やっかみから守って育てることが必要であるが、多くの場合、そこまで手が回らない。あるいは社長自身、成長後の既存事業しか知らないので、そもそも新事業を立ち上げる苦労を肌で感じたことがない。新事業を立ち上げる際のスピード感や割り切り、必要な熱意が理解されていない。

本社スタッフ、事業部スタッフは会社の中で優秀と思われる人がなるが、分厚い資料を作るのは得意で、徹夜までして熱心に取り組むが、現場に貼り付いて売上・利益を上げることに命をかけることはまずない。

事業部には優秀な人材が埋もれているはずであるが、誰が本当は力があるのか、もっと引き上げるべきなのか、見つけ出して経営改革に取り組ませることは至難の業だ。彼らは組織の奥に埋もれている。出て来ようとしても、悪意のない凡庸な上司に奥にしまい込まれている。

「危機だ、経営改革だ」と叫んでいる社長自身、高級車を乗り回し、土日はゴルフ三昧で、本気で改革に取り組んでいる気配が見えないこともよくあるだろう。役員も社員もそれを見ているので、社長の気持ちを全く信用できない。

ということで、経営改革をどんなに叫んでも、一筋縄では動かない。社長が本気で取り組み、社員に見本を見せ、同時並行的にアクションをしかけていかないと到底動かない。

7つの鍵を同時に開けないと動かない

経営改革を進めるには、ドアに7つの鍵がかかっている状況を思い浮かべるとイメージをつかみやすい。7つの鍵を全部同時に開けて、初めてドアは開く。簡単なことではない。

苦労して1つの鍵を開けても、他の6つがかかっているままだと、当然ドアは開かない。鍵があと2つあると気づき、頑張って3つの鍵を開けても、他の3つがかかっているままだとドアは開かない。

長年にわたり経営改革を支援・推進してきた私の経験では、経営改革を実現するには、少なくとも次の7つの鍵を同時に開ける必要がある。再現性のある確実な方法であるが、数年以上の徹底したコミットメントがどうしても必要だ。

第1の鍵: ビジョンと戦略の変更、方針転換

経営改革を進めるには、現実を直視し、顧客、自社、競合の最新状況を踏まえて、会社のビジョンと戦略を考え直すことが出発点になる。見たくないものを見ることになるので、苦痛を伴う。

ただ、成功の基となった過去の事業基盤がどう変わったのか、新たにどうすべきなのか、これをゼロベースで考え、再構築することなく組織のベクトルの方向を変えることはできない。

社長を含む少人数のチームで、自分たちは今後どうやって儲けるのか、どうやって再度成長するのかを整理する必要がある。業界一位に安住しているうちに、ドル箱だった市場セグメントが急減したり、新たな競合が出現したり、失われた競争優位性をどうやって取り戻すのか、どういう戦略転換をするのかをパワーポイント数ページに整理する。

第2の鍵: 既存事業の抜本的改善 – 詳細なターゲット設定と厳しい進捗管理

ビジョンと戦略を変更したら、それに合わせて既存事業をゼロベースで見直す。過去の成功にとらわれず、最速で立て直すためには、新しい方針をブレークダウンした詳細なアクションプランを立案する必要がある。

この時、しばらく前まで利益をあげていた既存事業の幹部は「自分のやり方が悪かった、事業環境の変化に対応しきれなかった」とは夢にも思わないことが多いため、社長は断固とした姿勢で臨むしかない。過去に成功した経営幹部ほど、悪意なく頭が固くなってしまう。

アクションプランが立案されたら、詳細なターゲットKPI(Key Perfomance Index 経営指標)を設定し、週次・月次の進捗確認会議で実行状況を厳しくレビューする。既存事業部のメンバーの過半数が新たなミッションの達成に全力で取り組むかどうか、そのように経営幹部を社長が追い込めるかどうかが成否を決する。

第3の鍵: 複数の新規事業立ち上げ – リーンスタートアップ

既存事業の立て直しを全力で進めるものの、それだけでは延命が進むだけで、新たな収益源が見えて来ない。社員も会社の将来に夢を持てなくなる。したがって、新しい時代に向かって新規事業を立ち上げていくことがどうしても必要だ。その場合、旧来の新規事業への取り組みでは時間とコストがかかりすぎるため、リーンスタートアップのアプローチが効果的になった。

リーンスタートアップは、企業規模によらず、新事業立ち上げの確率を大きく上げてくれる。「顧客・ユーザーが泣いて喜ぶ価値仮説」と「1人のユーザーが3人連れてきてくれる成長仮説」を800~1000字で詳しく書き、それを実証する実証ミニプロダクト(MVP)を素早く構築し、検証・修正・再構築するアプローチだ。言いかえると「素早い仮説構築・検証・修正型の商品開発」となる。

顧客・ユーザーの反応を極力リアルに近い形で検証し商品開発を進めるだけに、開発期間もコストも従来の数分の一以下になる。そういったリーンスタートアッププロジェクトを2~4つ並行して走らせることで、チームが健全に競争し、さらに大きな成果をあげることができる。リーンスタートアップのノウハウも社内に蓄積される。これからの新規事業立ち上げは、「確定論的」ではなく、「確率論的」に進まないといけない。

第4の鍵: 高度な経営支援能力の構築 – 経営改革推進チームの設置と実践トレーニング

既存事業の立て直しや複数のリーンスタートアッププロジェクトを推進するためには、高度な支援能力を持つ経営改革推進チームを設置し、あらゆる問題点を解決していく必要がある。ラインの人間だけでは、頓挫することが多い。会社組織の慣性や社員の反対を乗り越えなければならない上、ゼロベースの発想が要求される経営改革は、普通に仕事ができるだけでは、あまりうまく推進できない。

具体的には、問題把握・解決力が高い部課長4~6名を選抜し、メモ書き、フレームワーク作成、ホワイトボード活用トレーニング、コミュニケーショントレーニング等で徹底的に鍛え上げる。プロジェクト推進上の成功体験、失敗体験を共有し、支援への使命観も強化する。

プロジェクト推進経験のあるシニアメンバーと初めてのメンバーを組み合わせ、既存事業立て直しや新事業立ち上げプロジェクトに投入すると最速で育てることができる。6ヵ月程度のプロジェクトを3つ経験すれば、かなりの自信がつく。

ただ、決して簡単ではないので、ここはできればお手伝いさせていただきたい。どんなに優秀な人材も、経営支援のノウハウ・スキルはあまり持ち合わせていないからだ。1年半ほどの実戦トレーニングで社内最強のメンバーが育つ。何とか頑張ってやり抜け、といった精神論では社員がへたる。

いったんこのチームができあがると、社長にとって実に仕事がしやすくなる。難易度の高いプロジェクトには、必ず経営革新推進チームメンバーを数名アサインすることで、最速で成果を出すことができるようになるからだ。

第5の鍵: 幹部人材の把握と成長目標の設定、成長への取り組み-人材開発委員会

経営改革に際しては、最初に社内の人材把握を行うことが望ましい。具体的には、社長を含む経営幹部数名からなる人材開発委員会を開催する。

執行役員・部課長全員の強み、成長課題、成長目標、成長目標を達成するための本人の施策、上司の支援策を事前に上司が1ページにまとめておき、人材開発委員会でレビューする。レビューとディスカッションは、一人7~8分でできる。要は戦いを前にした、味方の勢力の棚卸しだ。

人材開発委員会の開催により、人材のポテンシャルを短時間で把握し、経営幹部間に共通認識を作ることができる。経営幹部の部下育成への姿勢も、このディスカッションの中ではっきりと見えるので、社長には多くの発見がある。経営改革を託せる人材が見える。通常の人事評価のアプローチとは全く異なるものだ。

第6の鍵: 部下育成への意識づけとノウハウ共有 – 上司・部下の意識・行動改革

組織は上司と部下でできている。直属上司が部下に与える影響は大変大きい。上司によって部下は育ちもするし、苦しみもする。経営改革に際しては、会社の新方針・新しい経営のあり方を社長から下におろしていくため、上司が部下にどのように伝え、どういうメッセージを言葉や態度で発するかで、部下の行動がかなり規定される。

したがって、経営改革をスムーズに進めるためには、上司のあり方、部下への接し方を改善すると効果的だ。例えば、部長5名に4ヵ月にわたって毎月1回集まっていただき、それぞれの部下3名ずつをどう育成するか、どう支援するかを発表しあう。成功事例も失敗体験も共有する。

そのプロセスで、部長の間で部下育成へのノウハウ共有ができるだけではなく、一体感が生まれ、経営改革への機運が盛り上がる。部下は部下で、上司が本気で育てようとしてくれている、気にかけてくれている、と感じることで発奮する。副次効果としては、部長間のこれ以外のコミュニケーションも大幅に改善される。お互いの信頼関係が強化されること、同じ大変さを共有しているという同士意識からだ。

経営改革を進めていく上で、こういった上司・部下の信頼関係と意識・行動改革が大きな鍵になる。会社全体の風通しとフットワークがよくなる。

第7の鍵: コミュニケーション改善 – ポジティブフィードバック、アクティブリスニング徹底

最後の鍵は、コミュニケーション改善である。日本の会社の文化なのか、人をほめると損だと思ってでもいるかのように、部下をほめない。部下を叱ってなんぼ、と思っている人もいる。

私はこれに全面的に反対している。叱られて嬉しい人など一人もいない。ほめられ慣れていないため屈折した反応をする人はいるが、それとほめる方がよいこととは別だ。

ただ、成果が伴っていないこともあるので、そういう時はほめるのではなく、ねぎらう。努力を感謝する。次からはこうやったら失敗しないよと励ます。それらを総称して、ポジティブフィードバックと呼んでいる。

アクティブリスニングはもちろん、真剣に相手の話を聞くことだ。相づちを打ちながら、相手の目を見ながら相手に本気で関心を持って話を聞く。

ポジティブフィードバックとアクティブリスニングを組織内で徹底すると、人と人との関係がより建設的なものになる。余計な軋轢やミスコミュニケーションがなくなる。

経営改革のようにストレスが起きやすい時はなおさらポジティブフィードバックとアクティブリスニングにより人と人との関係をスムーズにし、社長の新方針が効果的に伝わるようにすべきと考えている。

そういう組織は硬直化しない。会社で仕事することがわくわくする。事業は大変な状況でも、前を向いて明るい気持ちになれる。経営改革を進めていく上で、重要なエネルギー源になる。

経営改革の推進こそ、社長の役割

7つの鍵を同時に開けないと経営改革は進まない。不退転の決意で同時並行で鍵を開けていく。それこそが最高経営責任者の社長の役割であり、それ以外の人にはこの役は到底務まらない。

もしそれが負担だ、自分にはそこまでできないという社長がいたら、さっさと後進に道を譲っていただきたい。副社長、執行役員などの中に適任がきっといる。

経営改革をしなければ会社は死ぬ。死なないまでも、じり貧のまま退化していく。誰も特にさぼったわけでなくても、事業環境が変われば会社は弱体化する。会社が変わらない理由と変える方法を理解し、7つの鍵を同時に開けていくことで、新たな命を吹き込んでいただけたら嬉しい。

7つの鍵の具体的な開け方については、次回以降、順次詳しくお話したいと考えている。

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