実行できる人になる
前回に続き、『頭を前向きにする習慣』についての第3回をお送りする。
第1回でご説明したような日本の根本的な危機について誰に話しても、反論はあまりない。ただ、私の話を聞くまでこの問題を深刻に考えていなかった人の方が多いし、そういう人たちは、聞いたからと言って具体的に何かを変えようというわけでもない。
円安にともなう一部企業の好景気と株高は、一見明るい話題を提供してくれるが、国際競争力の低下という日本の本質的問題を解決してくれるわけではない。
私は、日本人がいわゆる「ゆでがえる」状態にあると考えている。深刻な問題が起きているのに、変化が少しずつなので、あまり気がつかず、のんびりしている。あるいは、問題に気づかないふりをして、日々過ごしている。気がついたときには、すでに手遅れになってしまう状態だ。
鍋がもっとぐらぐら煮えている状況でも、ほとんどの日本人は変わろうとしない。企業も一部を除いて、この状況に本気で対処しようとしていない。ハングリー精神が強い人に出会うことはまずない。
一方、世界はすさまじいスピードで変化し、激烈な競争をくりひろげ、ダイナミックに発展している。頑張れば、かなりの確率で成功する。頑張らなければ、家がなく、食べ物がなく、治療が受けられず、家族もなく、死ぬという状況が待っている。
その差は実にはっきりしていて、誤解の余地がない。「頑張って成功する、生き残る」「必死になって働いて、家族を助ける」という概念は当然だし、ハングリー精神が強いとか弱いとかいう話自体、多分ないのだと思う。世界はいま、「ハングリーにやるしかない新興国」と、「ハングリーにやると素晴らしい成果を得られる欧米諸国」と、「ハングリー精神を忘れてしまった日本」とに分けられるのではないだろうか。
著者= 赤羽雄二
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自分のいる会社がどうなるか、誰にもわからない。ある日突然、外資系になり、「ハングリーでない人はいらない」「3ヵ月以内に結果を出せない人はいらない」と宣言されるかもしれない。安定的な事業を数十年やっていたところに、外資系や異業種が新規参入してきて、非常識な価格破壊で一気にシェア1位になってしまうかもしれない。
好調な会社もあっという間に競争力を失う時代に突入した。ポテンシャルを活かしきっていない低成長な会社がグローバル企業に買収され、コア事業以外を切り売りされる可能性も高い。そこには日本的な温情はない。何倍もドライだと考えておいた方がいい。どちらがいいということではなく、大半の日本企業の競争力の低下から考えて、何が起きても不思議はない、ということだ。最高益更新の日立製作所ですら、時価総額は4兆前後であり、米GEの1/8に過ぎないのだから。
こういう時代に、評論家、批評家はいらない。各社が、各人がさっさと行動し、結果を出すべき時期だ。一人ひとりがこうだと思ったら、行動し、自分としての結果を出す必要がある。自分一人さぼっても全体では何とかなる、ということはもはやない。
世の中には色々と助言してくれる人がいる。ただ、こちらのためを本当に思って真剣に助言してくれているのか、ねたみや意地悪から来ている言葉なのか、細心の注意を払って見極める必要がある。真剣な助言ならあくまでこちらを思ってのこと。理由も背景も具体的なアクションも包み隠さず話してくれる。こちらの気持ちがすっきりして、明るくなる。やる気が出てくる。
ねたみや意地悪の場合は、常に含みを持たせた、こちらを混乱させるような言い方が続く。味方すると言っておきながら、混乱させるような、冷や水を浴びせかけるような意味深な一言を付け加える。いいお話をしてくれたと思うのに、「なるほど、こうすればいいんだ」という気になぜかならず悩みが増える。
支援してくれている割に、会う度に微妙な気持ち、ちょっと嫌な気持ちになる時は注意した方がいい。意図的に操作されている可能性がある。悪意でこちらを悩ませて、楽しんでいる。そういう人には二度と相談しない方がいい。
前向きに考え、生きてみる
もやもやが晴れると、何をすべきかすべきでないか、自分が本当にしたいことは何か、はっきり見えてくる。私たちの頭は、集中するとものすごいパワーを発揮するが、何かが気になると全く動かなくなる。気分がいいと前向きになれるし、ちょっと嫌なことがあると何もしたくなくなる。
実に微妙だ。微妙だからこそ、私は細心の注意を払って自分の「もやもや解消」「もやもや掃除」に取り組んできた。そういう「つまらないもの」で気分を悪くしたり、頭を鈍らせたりするのは避けたいと思ったからだ。
そのうちの一つがA4メモで、自分で実際に数万ページ以上書き、多くの人にも書いてもらった結果、もやもやを晴らすことは誰でも比較的簡単にできることがわかった。もやもやを晴らすだけではなく、何をすべきかすべきでないか、自分が本当にしたいことは何か、などがはっきり見えてくる、という実感を持った。
進むべき方向がはっきり見えてくると、躊躇していたことも背中を押されることになり、一歩前に踏み出しやすくなる。何かをやろうと思っても、「それでいいのだろうか」「もっといい方法があるのではないか」「失敗したら周りの人はどう思うのだろうか」「失敗してもっとみじめになるのではないか」「やらなければ失敗もしないからやめておいた方がいいのではないか」と思って、結局動けなくなってしまった経験はないだろうか。A4メモによってもやもやが晴れ、やるべきことがはっきり見えてくると、そういう気持ちが軽くなって、はるかに動きやすくなる。
人はもともと前向きにできている。生きるエネルギーがあり、少しくらい病気や怪我をしても立ち直り、次々に創意工夫をし、生活を改善し、家族と仲間を増やし、繁栄してきた。
後ろ向きで、否定的で、常に不機嫌で、不平ばかり言っている人がいるとしたら、多分、それは人間の自然な本性ではなく、親、学校、会社などでその人個人にトラウマがあり、不幸な過去を背負っているからではないか。自分がひどい扱いを受けた親は、ものすごく傷ついた結果、心のバランスをうまく取れない。まともな接し方をあまり知らないため、決して望んでいないのに自分の子どもにもあたりがちになったりする。
右翼や左翼ということとは全く関係なく、愛国心を持たないということは、国民としてのアイデンティティーもなく、それに関する主張もなく、適切な反論もなく、国際社会で流されるだけの存在になる。サッカーのワールドカップやオリンピックでの日本人選手の活躍だけ熱心に応援するのは、極めて片手落ちであるのは言うまでもない。
こういう国では、一人ひとりが思い切って変わっていかないといけない。一人ひとりが立ち上がって、「自分はこういうことがしたい」「自分の夢に一歩でも近づくために、こういうことをやっていきたい」と積極的に動かなければならない。今の政治家や官僚にはほとんど期待できないが、一人ひとりが立ち上がって発言するようになると、それに合わせて政治も行政も改善されていく。政治家や官僚の質は、国民の民度をそのまま反映するものだから、並行して上がっていく。
〈了〉
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