この連載では『3年後に結果を出すための 最速成長』の内容をベースに、いま急速に発展しているテクノロジーや、時代の変化にあわせて身につけておきたい能力について、とくに重要なものをポイント立ててご紹介します。第3回のテーマは「自動運転」です。
数年後に迫る自動運転の普及
近い将来、自動車の自動運転が当たり前になります。
すでに運転手が搭乗しない形での公道試験は、米ミシガン州が2016年12月から全米で初めて解禁しました。日産のゴーン前社長は、2022~2023年には、無人運転タクシーが実施されると断言しています。米アップルも米カリフォルニア州で自動運転実験の認可を先ごろ受けました。
時期は若干遅れても、遅かれ早かれ、タクシー、バス、長距離トラックなどの自動運転は確実に可能になると考えられます。それは現在も、通勤電車やバスを自分で運転しようとは思わず利用しているのと同様です。自動車は、運転するのではなく、ある場所から別の場所に移動する交通手段としてのみ、考えるようになります。
さて、こうしたことは、私たちにとって何を意味するのでしょうか。
通勤や営業などで、やむなく自動車を自分で運転していた人にとっては、運転の時間をより有効な時間に当てられるようになり、生産性が上がります。 通勤時間に本を読んだり、ニュースを見たり、勉強したりできます。より多くの営業活動ができます。一日の可処分時間が数時間増えますので、プライベートも充実します。
運転が好きな人にとっては、もちろん趣味として運転を続けていただければよいと思います。ただ、自動運転がほとんどになったとき、人の運転は危険なため、専用サーキットなどに限られるかも知れません。
一方、運転や運転手の補佐を仕事としていた人にとっては、深刻な事態です。その仕事そのものが消滅する流れにあるからです。人の運転を前提として成立していた仕事、例えば、交通整理の警察官、トラックやタクシー運転手用の食堂なども消滅の可能性があります。
また、自動車間コミュニケーションや自動運転が広まると、ものすごくよい点があります。それは、交通事故がほぼなくなると考えられることです。これは私の期待ではありますが、 技術の発展を考えると十分可能なはずです。
人が運転しないので、スピード違反も信号不注意もなくなります。自動運転時には、すべての車が安全運転をするだけではなく、車と車がお互いにコミュニケーションをし合いますので、衝突事故がなくなります。今、多発して社会問題化している、高齡者のアクセルとブレーキの踏み間違いでの交通事故もなくなります。歩行者の位置を無線あるいはカメラで把握しますので、不注意で事故を起こしたりすることがなくなるのです。
さらに良いことに、交通渋滞もなくなると思います。多くの信号が不要になり、また残ったとしても、各方向の交通量に応じてこれまでより柔軟に切り替えが行われます。車と車が適切な車間距離を保って同一スピードで走り続けますので、単位時間あたりの通行車両数が上がります。
ただ、一つ注意しておくべきことは、移行期の問題です。前述のとおり、すべての車が自動運転になり、相互に通信して安定して走るようになれば交通事故はなくなりますが、そうなるまでにはかなりの時間が必要です。道路上に、人が運転する車と自動運転車が混じっている場合、交通事故がどちらの責任で、どう対処すべきか、社会的な合意形成が必要で、これには時間がかかります。
いつこの変化が訪れるかは、国の規制と技術の発展に大きく左右されますが、少なくても一部の自動運転は、数年以内に本格運用が始まると考えておくほうが安全です。自動運転に関しても多くのニュースを目にしますが、今後も公道で実際何ができるようになったのか、法規制や保険がどうなるのか、などに注目していれば、よりよく見えてくると思います。
メリット
- 交通事故がなくなるのは、社会的には大変なメリット。2016年の交通事故数は49万9201件、死傷者3904人、負傷者61万8853人。
- 渋滞がなくなると、物流や営業など物、人の移動のすべてが効率的になる。時間のロスがなくなり、コンビニへの配送などもこれまでより、はるかに容易になる。
- 自動運転を実現するための、自動運転車の車両開発、自動運転システム開発、センサー開発、道路標識との連動、3D道路情報の作成、混雑情報の収集・加工・提供、自 動運転車向けレーンへの信号開発、自動運転車向けの駐車場設置、新しい保険の開発、自動運転車の関連法案制定などの仕事が大幅に増える。
- デジタル化の進展などで最近、半導体が好景気になっているように、半導体、半導体製造装置、半導体検査装置などの産業がかなり長期間、好調になる。全世界の自動車が自動化されるまでの期間、未曾有の好景気になる可能性が高い。ちなみに、2016年に全世界で9000万台の車が生産されているが、自動運転システムは、新たに発生する費用であり、かつ1台あたり高額なので非常に大きな市場になる。
- 日本が世界に先んじて実証実験をできた場合、システムを世界各国に輸出することが可能。また、都市計画、行政計画のすべてが変わるので、世界中に事業機会があり、貢献できる。
デメリット
- 法制度の整備が追いつかず、しばらくの間は、自動運転車にぶつけられたとか、自動運転車に乗っていて事故が起きた場合に、十分な保障を受けられない可能性がある (自動運転用の保険特約が提供され始めたが)。
- リスクが大きいため、自動運転車の保険料は当初かなり高い可能性がある。
- 人間が運転している車と自動運転車が混在するかなりの期間、運転上も、法規制上も混乱が続く。
A4メモのタイトル例
- 自動運転が普及すると、自分の仕事にはどういう影響があるか?
- 自動運転が普及すると、産業にどういう影響を与えるか?
- 日本で、自動運転車が普及し始めるきっかけは何か?
- 自動運転に関わる仕事で、大きなチャンスを得るには?
- 自動運転車が普及すると、どういう問題が起きるか?
※A4メモ書きは、『ゼロ秒思考』でご紹介しているシンプルな思考整理トレーニング方法です。
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▼本書の内容を全16回にわたってご紹介します。
第1回「AI(人工知能)の発展によるメリット・デメリットは?」
第2回「ロボットの進化によるメリット・デメリットは?」
第3回「自動運転の普及によるメリット・デメリットは?」
第4回「ドローンの進化によるメリット・デメリットは?」
第5回「IoTの発展によるメリット・デメリットは?」
第6回「人生設計力を身につけるには?」
第7回「成長力を身につけるには?」
第8回「思考力を身につけるには?」
第9回「スピードを身につけるには?」
第10回「グローバル行動力を身につけるには?」
第11回「リーダーシップを身につけるには?」
第12回「経営改革推進力を身につけるには?」
第13回「転職力を身につけるには?」
第14回「起業力を身につけるには?」
第15回「自己肯定感を高めるには?」
第16回「今後に向けた目標・成長へのスタンス」
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